
近年、目覚ましい進化を遂げている画像生成AIの世界。これまで、高品質な画像を生成する手法として「拡散モデル」が広く利用されてきました。しかし、OpenAIの最新モデル「GPT-4o」は、従来のモデルとは異なるアプローチで、特に人物の再現性において驚異的な能力を発揮しているようです。本記事では、近年の画像生成AIのトレンドを振り返りながら、GPT-4oが示す新たな可能性について考察します。
デファクトスタンダードだった拡散モデル
Stable Diffusion、DALL-E 3、Imagenなど、私たちの目に触れる機会が多い画像生成AIの多くは、「拡散モデル」を基盤としています。拡散モデルは、まず既存の画像に徐々にノイズを加え、最終的にランダムなノイズの状態にします。そして、学習済みのモデルがこのノイズから元の画像の特徴を段階的に復元していくことで、高品質な画像を生成します。このプロセスは、まるで紙に下書きを重ねてイラストを完成させるように、徐々に詳細を描き出していくイメージです。
研究レベルで進化する自己回帰モデル
拡散モデルが隆盛を極める一方で、研究の世界では、言語モデルの技術を応用した「自己回帰モデル」も着実に進化を遂げていました。GoogleのPartiやFacebook AI ResearchのCM3leonなどがその代表例です。自己回帰モデルは、文章生成のように、既に生成されたピクセルやトークンに基づいて、次のピクセルやトークンを順番に予測・生成していく方式を採用しています。Partiは、テキストから画像を生成するタスクを、機械翻訳のような「配列から配列への変換問題」として捉え、当時の最先端の拡散モデルを超える性能を示すこともありました。
マルチモーダルAIの登場と画像生成への応用
そして、2024年に入り、Gemini 2.0やGPT-4oといった、テキスト、画像、音声など多様な情報を扱える「Any-to-Any」モデルが登場しました。これらのモデルは、従来の画像生成AIとは異なるアプローチを採用している可能性が示唆されています。
特に注目すべきはGPT-4oです。ユーザーからの情報提供によると、GPT-4oは参考となる人物イメージをもとに、異なる動作や角度から見た絵を描く際に、非常に高い精度で同じ人物を再現できていたのです。これは、従来の拡散モデルであるImagen3やFluxなどでは難しかった点であり、別の人物に見えてしまうようなケースも少なくありませんでした。それを考える、驚異的な進歩です。


こちら、ディテールを細かく見ると違和感があるところは多少あるかもしれませんが、見事に再現できていると言えないでしょうか?
GPT-4oはなぜ「別人」にならないのか?
GPT-4oが、拡散モデルが苦手とする人物の同一性維持において優れた能力を発揮する背景には、いくつかの要因が考えられます。
- 言語モデルの強力な知識と理解力: GPT-4oは、高度な言語理解能力を持つ基盤モデルであり、テキストや画像から人物の特徴を深く理解し、記憶する能力が高いと考えられます。
- 離散的な表現の利用: 自己回帰モデルは、画像を連続的なピクセルデータではなく、離散的なトークンのシーケンスとして扱います。この表現方法が、特徴をより安定的に捉え、再現するのに有利に働く可能性があります。
- 大規模な学習とスケーリング: 膨大なデータで学習されたGPT-4oの巨大なモデルサイズも、多様な人物の特徴を詳細に学習し、異なるシーンでも一貫性を保つ上で重要な役割を果たしているでしょう。
- 段階的な生成プロセス: GPT-4oの生成過程に見られる、まず低解像度で全体像を描き、その後、細部を追加していくという手法が、初期段階で人物の核となる特徴を捉え、それを維持しながら多様なシーンを描き出すことを可能にしていると考えられます。
画像生成AIの未来:多様なアプローチの融合
今回の考察から、画像生成AIの分野では、拡散モデルだけでなく、自己回帰モデルをはじめとする多様なアプローチが進化し、それぞれの強みを活かしたモデルが登場していることがわかります。特に、GPT-4oのように、言語モデルの知識と理解力を活用した自己回帰的な手法は、これまで課題とされてきた人物の同一性維持において、新たな可能性を示唆しています。
今後、画像生成AIは、単一の手法に留まることなく、様々な技術が融合し、より高度で多様な表現力を獲得していくことが期待されます。GPT-4oの登場は、その進化の過程における重要な一歩と言えるでしょう。
2025年3月27日

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